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1 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:41:04.84 ID:ATWA4atU
二軍本拠地、ナゴヤ球場横の昇竜館で迎えた新年、
一人の男――例年ならこの時期、広島・大野練習場に張り付いている――が穏やかな顔で新人を見守っていた
室内練習場に響く選手の掛け声、どこからか聞こえる和やかなトレーナーの声
例年とは違う、その役割に多少の違和感を感じながら
スコアラーに転身してから中日球団が勝ち取った栄冠、喜び、感動、そして何より信頼してくれる監督・・・
それを全て過去のものと自分に納得させ、一球団職員として第3の人生を歩まなければならない
「スコアラーだけが仕事じゃない、縁の下で支える部署はたくさんある」善村は独り言を呟いた
どれくらい経ったろうか、善村ははっと目覚めた
どうやら書類の体裁を整えるうちに眠ってしまったようだ、冷たいスチール机の感覚が彼を現実に引き戻した
「やれやれ、去年まではこんな無防備に寝る事なんて無かったのにな」善村は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、善村はふと気付いた
2 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:41:32.02 ID:ATWA4atU
「あれ・・・？デイリーの記者がいる・・・？」
部屋から飛び出した善村が目にしたのは、見慣れない――今年入団した選手の――名前が書かれたビブスをつけた選手たちだった
足が千切れそうなほどに反復横跳びが繰り返され、地鳴りのように若手のうめき声が響いていた
どういうことか分からずに呆然とする善村の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「おうヨシ、新人をこんなに早く見に来るのはお前と村田ぐらいなもんだな」声の方に振り返った善村は目を疑った
「え・・・苑田さん？」 「なんだヨシ、居眠りでもしてたのか？」
「む・・・村田スコアラー？」 「ヨシさん携帯鳴ってますよ、メールじゃないですか？」
「尾形・・・」 善村は半分パニックになりながら携帯電話を取り出した
差出人：落合監督 件名：昨日の 本文：新人合同自主トレの報告書が来てないんだけどやる気あるの？ 3 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:41:59.67 ID:ATWA4atU
暫時、唖然としていた善村だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった
「偵察できる・・・警戒できるんだ！」
バッグからガンを取り出し、ブルペンへ全力疾走する善村、その目に光る涙は昨日までの寂寥感とは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている内川が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った
5 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:43:20.51 ID:/SEdi51A
なかなか新しい切り口
7 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:44:32.83 ID:8LHVkEVg
そうかもうヨッシはスコアラーじゃなくなったんやな・・・
9 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:46:59.29 ID:sxvBmf/2
ちょっと切ない
11 ：
風吹けば名無し 2012/01/20(金) 22:47:12.02 ID:3LkRzbRJ
ｲｲﾈ･
善村一仁は眠らない
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1327066864/
